力士≠YouTuber。コンテンツ化する”力士の日常”の裏で守るべき一線とは

相撲×YouTube

最近、たくさんの相撲部屋のYouTubeチャンネルが活発化しています。

YouTubeは全世界に発信されるため、大相撲ファンはもちろん、これまで大相撲をあまり知らなかった方にも「力士の日常」が身近に感じられ、大相撲の魅力が届く大きなきっかけになっています。

しかしその一方で、「見せること」が前提になることによる力士たちの無意識の負担や、我々視聴者の過度な期待も生まれているかもしれません。

今回の記事では相撲部屋のYouTubeを見るにあたって視聴者が留意すべき点を挙げ、視聴者の振る舞いにフォーカスしながら解説していきます。

この記事は特定のYouTubeチャンネルを批判するものではありません。

留意点①”力士の日常”が全てコンテンツになることはない

相撲部屋のYouTubeは主に稽古や食事・筋トレシーンを映しつつ、力士や親方と会話を繰り広げるいう構成が多いです。

つまり、「力士の日常」を素朴に映しているわけです。

このような形式だと、「もっと力士のプライベートを知りたい!」「力士は稽古休みの日に何をしているの?」など、より力士の日常について興味が湧いてくるのは自然現象です。

しかしながら、力士の日常を全てコンテンツ化することはできません。

YouTubeはあくまで広報活動の一環です。仕事と言われれば仕事なのかもしれませんが、本業とは言えません。

もっと見たい・知りたいと欲望を持つのは我々ファンの自由ですが、力士の日常をコンテンツ化するのには限界があることを頭に入れておきたいと筆者は考えます。

留意点②力士はYouTuberではない

力士の本業は相撲です。力士系YouTuberではありません。

YouTubeはあくまで広報活動の一環です。仕事と言われれば仕事なのかもしれませんが、本業とは言えません。

地方巡業や地域の人々との交流活動など、YouTubeで撮影される以外にも力士がやることはたくさんあります。

YouTubeが時間通りに更新されなかったり、特定の関取がなかなか動画に現れなかったりすると「更新がない!」「◯◯をもっと映してほしいです!」などのコメントをYouTubeのコメント欄やSNSで見かけることがあります。

指摘・リクエストしたくなる気持ちもわかりますが、力士の日常を「覗かせてもらっている」くらいのテンションが丁度良いのかもしれません。

留意点③全力士が”エンターテイナー”気質?

全力士が「自分のことを話すのが得意」「もっと自分のプライベートな部分も知ってほしい」と思っているわけではないというのも理解する必要があります。

もしかしたら「YouTubeに映りたくない」と思っていても、「部屋の力士たちはみんな映っているしなぁ…」となかなか言い出せなかったり、コメント欄の少なからず存在する期待を裏切ってしまうのではないかと考えたりしている力士もいるかもしれません。

YouTube出演をするにあたって当事者の同意を得ているとは思いますが、万が一の可能性として考えられることではないでしょうか。

深読みしすぎな気もしますが、個人的には力士の立場になって考えてみることも必要だと思います。

小さい頃からメディアに出演していたわけでもないけれど、自分が共同生活している空間に急にカメラが入り込み、生活の一部が世界に発信され、人気は出ても、結果がなかなか思うようにいかない。思うようにいかない時でも密着される。

そのような環境は、無意識な負担となっている可能性があります。

そのため、無理な出演・質問は配慮する必要があるのではないかと思います。

こう書いてみると、「YouTube担当のカメラマン・編集者を批判したいのか?」と思われるかもしれませんが、ここではあくまで視聴者としての振る舞いに注目しています。

例えば、とある力士にインタビューしていたけど、「なんだか乗り気ではない・元気がないな」と編集者が判断し、そのインタビューを全てカットし、動画を公開したとします。

その時にコメント欄などで「もっと〇〇にもインタビューしてください!」「もっと◯◯が話しているところが見たいです!」と書くことに対して、一歩踏みとどまってみても良いのでは?ということです。

我々ファンが楽しむ相撲部屋のYouTubeは、ノーカットでアップされているわけではありません。裏方の方々の血の滲むような努力によって、見やすい・楽しい動画が制作されています。

その努力の中で、我々視聴者の声に耳を傾けつつも、「これは公開しないほうがいい」と判断される場面もあるかもしれません。

つまり、ファンが見たいと思っているものが公開されていない理由には、配慮や思いやりが含まれていることもあるのです。

その想像力を我々視聴者が少しだけ持つと、力士にとっても視聴者にとっても心地よい動画が生まれるのではないでしょうか。

”ちょっと覗き見”の意識

これからの「相撲×YouTube」の関わりは、我々視聴者のマナーが鍵になっていくと思います。

マナーが悪ければ、コメント欄封鎖などのより厳しい「YouTubeガイドライン」が発表されるかもしれませんし、逆にマナーが良ければ相撲部屋のYouTubeを長く楽しむことができるでしょう。

楽しませてもらっているからこそ、ちょっとした配慮を大切にしたいですよね。

私たちも、力士や相撲部屋へのリスペクトを持って、相撲部屋のYouTubeを「見させてもらっている」という意識で楽しむ必要があると思います。

小娘小話:YouTubeで知れた意外性

私は明生関を応援しているのですが、明生関は本場所中は勝ち越しインタビューを受けずに支度部屋に戻るなど、感情や自分のことなどを表に出さない力士という印象でした。

しかし、立浪部屋のYouTubeが始まったことを知り、動画を視聴すると…。

ニッコニコでインタビューに答えているではないか。

そして結構おしゃべりではないか。

そんなギャップありですか?!

インタビューに答えてくれるだけで、カメラの前に登場してくれるだけで、カメラの前をすり足で通過してくれるだけで、怪我なく本場所15日間を終えてくれるだけで、十分満たされてしまいます。

タイトルとURLをコピーしました